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ヨムカク

KADOKAWAとはてなの小説投稿サイト「カクヨム」専門の読み専レビューブログです。

「uNeTeRNaL」を読んで考える、先行作品研究の重要さ

実はtwitterでレビュー希望を募集いたしておりました。

先日レビューしました「ネッ禁法時代:東京試炸例(トーキョー・バースト・プロトタイプ)」についても、twitterでのレビュー希望募集から拾い上げた一作です。

幸運にもネッ禁法時代は前回レビューの通り、大変素晴らしい作品でした。

しかし、上記の通り、「辛口なレビューを厭わない」という条件で募集いたしましたので、遠慮無くバッサリとしたレビューも書かせていただきます。

 

kakuyomu.jp

そんなわけで今回ご紹介する作品は上記です。

 

天才科学者・愛都世羅が開発し、不老不死の実現に成功した人不老化ワクチン〈C2V〉。しかし、このワクチンを購入するには高額な費用がかかる。その費用を捻出できない低所得者層と富裕層の間では軋轢が発生。日本がそれでもワクチンの導入を決定するなか、アメリカは「終末法」という名の「百年しか生きられない」という法律を導入し、日本もその後を追うことに……。

 

という展開のストーリーなのですが、もう気付かれる方もいるかもしれません。

 

作品の最も致命的な部分です。

大変人気な先行作品が存在している」という大変悲しいお知らせ。

 



まあ、中身もこれに勝ててないんだから、書籍化とか受賞はいくらなんでも無理です。

しかも、出版社までまさかのKADOKAWAですからね。なんと皮肉な…。

 

先行作品をご存じないとしたら、それは単純に不勉強かつ調査不足としかいいようがないですね。

不老不死なんていう昔からあるテーマを扱うなら、せめて「不老不死 SF」とかで一度ググってみるべきでした。ご存知の上で書いていたとしたらもっと残念ですが。さすがにダメですよ。「似てるから」というより「勝ててないから」。

 

まあ、不老不死の実現という人類史を揺るがす発明の実現で、国家規模の騒動が描かれるというロマンあふれる設定の魅力をもった物語であることは否定しません。

 

ただ、いかんせん、残念ながら筆力のバランスがとれていないですね。

文章には硬軟や軽重というものがあります。これは決して、硬いほうが良いとか、重いほうが良いというものではないと思います。作家によってその得意不得意というものがある。しかし、本作のようなテーマを選ぶのであれば、読者としてはハードでどっしりとした重厚感を求めてしまうもの。

しかし、本作はその組み合わせがちぐはぐで、構成の緩急がとれていません。

真面目な調子で政治の世界を描くのかと思えば、中二病伝奇系作品かと思わざるをえない造語がバンバン登場し、マクロな経済観が描かれたかと思えば、キャラクターの妙な掛け合いが顔を覗かせる。ただただ書きたいものを書いているのかな、と残念ながら思ってしまう。「読者が物語を読みながら何を追っているのか」を意識できていないと感じました。

展開もよろしくありません。

せっかく不老不死のワクチンの高額さで揉め事がおきるかとおもいきや、あまりにもあっさり安価な大量生産に成功するし、終末法なんてあっさり法案が通り過ぎ。アメリカと日本の方針の対立が起きたかと思えば、あっさりと日本が後追いする。あんなにあっさり政治を数行で動かしたら勿体ないし、リアリティの位置を見失ってしまいます。

そしてそんなふうに読ませどころをバンバン飛ばすかと思ったら、浅い人間ドラマにページを割きすぎです。

人間模様を描きたいのであれば、伊坂幸太郎の「終末のフール」や村田沙耶香の「消滅世界」のようにもっと焦点をしぼって欲しい。群像劇としてもできていないので、ただただ断片的にピックアップされた人物のできごとを追っているにすぎない印象を持ちます。

国家規模の異変が起きている状況を設定してしまうと、「どんな登場人物を描いても、それなりに絵になってしまう」というのはとてもまずいですね。誰もがその状況に対して、その人物なりの反応を起こしますから。

でも、たとえば政治家を描くなら、政治の裏側を本気で魅せられる筆力が必要ですし、警察を描くにも医療の現場を描くにも、そのリアルを知り尽くした、強みがなければ書けないことなんですよね。本当は、異変が起きるからこそ、平時の舞台裏を書ききれるほどの筆力が必要なんです。しかし、本作はそこをライトな文体や造語、会話で逃げてしまっています。

この手のテーマを選ぶのであれば、それこそ極端ですが、本来はたとえば石黒耀さんのような専門性や重厚なストーリーテリングが必要です。あるいは、もっともっとテーマを軽くして、現実性を限りなく希釈した現代ファンタジーとして発表したほうが良かったんじゃないかと思います。

あ、オチについても、正直微妙です。まあ、トレンドといえばトレンドなネタですが。

 

でも、最後にフォローになってしまいますが、文章そのものの分かりやすさと勢いは評価します。15万字ほどありますが、特に苦はなく読み進めることが出来ましたし、楽しく読むことはできる作品かもしれません。

先行作品があるとはいえ、これほど大きい意欲的なテーマに挑んで、ちゃんと完結させていることは、素晴らしいことだと思います。僕には書けない作品なので、そこはリスペクトしています。

今後も意欲的な作品作りを頑張って欲しいです。

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