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ヨムカク

KADOKAWAとはてなの小説投稿サイト「カクヨム」専門の読み専レビューブログです。

世界で最も優秀なバイクで彩られた、孤独な少女のかけがえのない青春「スーパーカブ」。

「現代ドラマ」カテゴリーの個人的なイチオシ!

著者はakazaさん。タイトルは『スーパーカブ』。

天涯孤独、母に捨てられ、奨学金で山梨の高校に通う女子高生・小熊。

おかっぱ頭に野暮ったい目、学校には友だちもおらず、欲しいとも思わず、貧乏暮らしでひとりぼっちで暮らしているという、一見魅力的とは程遠い女の子が主人公。性格もまったく社交的ではなく、クラスメイトとのコミュニケーションですらわずらわしいと思っている彼女。

そんな彼女なのに、本作を読みすすめるうちに、いつのまにか愛おしくなっていました。

kakuyomu.jp

 スーパーカブに乗っていることを知り、それまでひとりぼっちだった小熊に話しかけてきたのは、容姿端麗、裕福で何もかも持っているように見えるクラスメイト・礼子。

スズキのハスラー50を乗りこなす礼子は、スーパーカブに乗る小熊のことを気に入ったらしく、馴れ馴れしく話しかけてきます。しかし、彼女に巻き込まれることに抵抗を覚えていた小熊も、いつの間にか、彼女と一緒にバイクの魅力にはまりこんでいくのです。

バイクに興味なんてまったく持っていなかったが、本作を読んで、思わずスーパーカブが欲しくなりました。

ひとが何かに惹きこまれていくさまはこんなにも美しいものか。

欲を持たず、興味を持たず、何も持っていなかった小熊が、少しずつ、スーパーカブで彼女だけの青春をつくりあげていく様子が、ほんとうに素晴らしい。著者の語りが魅力的だからか、読み進めるたびに、読者まで小熊と一緒にスーパーカブにのめり込んでいっているような気分に陥ります。一緒に、ロードを走り抜けているような気分になります。バイクの知識が存分に散りばめられた本作ですが、けっして作品のスピードを損なうことなく、バイクになんて興味のない読者でも、たいへん面白く読むことが出来ます。

本書はけっして派手な物語ではありません。

しかし、ほかの誰でもない小熊という少女が、他に何も持っていなくても、かけがえのないものを手に入れる物語。世界で最も優秀なバイクとともに、彼女がかけぬけたたったひとつの青春です。

僕の心を確かに打つ物語でした。

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↑ぜんぜん違う場所の写真だけど、海沿いをバイクで走るのは気持ちが良いだろうな。